「月を吐く」
かつて
夜空は
漆黒だった
星は
海中に瞬き
月は
海底に眠った
漆黒の鳥は
星を見た
星は
啄むには
多かったが
漆黒の鳥は
潮とともに
星を呑み
潮とともに
天空に
星を吐きつづけた
星は
夜空で瞬くようになった
漆黒の鳥は
月を見た
月は
啄むには
深かったが
漆黒の鳥は
潮をかき分け
月を目指して
潮をかき分け
海中に
潜りつづけた
脚は後退し
翼の油はなくなり
それでも
漆黒の鳥は
月を目指して
潜りつづけた
漆黒の鳥は
とうとう
月を呑んだ
そして
天空に
月を吐いた
月は
夜空を巡るようになった
(1999.7.12)