2001.2.26 洲澤さんからの手紙 その2「ブレードを前傾させる漕法について」

 2月22日にこのHPに掲載した「ブレードを前傾させる漕法について」について洲澤さんに率直な感想をお願いしたところいただいた返事です。


 我々が知識として知る数千年のパドリングの歴史の中で、何故、マリジアクの言動を殊更のごとく取り上げ、さもありなんと語らう根拠が僕には理解できないのです。
 マリジアクはこう言っているよ!程度のことではないでしょうか。
 復元した物を使い、漕いでみた方が事実は自分の肉体が教えてくれます。また、資料を見れば判ります。

 わたしの資料より、グリーンランド・パドリングについて。
 ビデオ/グリーンランド・ナショナル・カヤック・リーグの物が2本。ジョン・ピーターセンの物1本。マリジアクの物が未公開未編集の物を含め2本、いずれもジョン・D・ヒースより。アドベンチャー・カメラマン西川氏が撮影した物が1本。1930年代イギリスで撮影された物が1本。参考としてグリーンランド・ポーラ・エスキモーとの近縁であるハドソン湾エスキモーの生活を1930年代に記録した「ナノック・オブ・ザ・ノース」などなど。 
 また、写真など1930年代に撮影された物が色々と手許にあります。

 どれを、どのように見ても、グリーンランダー達は様々なパドリング・フォームを持っております。

 ジョン・D・ヒースにしても、デイビッド・ジマリーにしても、僕の質問に対しては、これが正しい漕ぎ方だなどとは一言も言いません。多くの何故ですかと言う質問に対して、彼らの返答は「理由は判らないが、現地ではそうしていた」と言うだけです。
 つまりマリジアクの解説は正しいグリーンランド・パドリングではなく、マリジアクの伝え知るパドリング技術なのです。

 高坂さんも理解されていると思いますが、どんなに形は似ていても、リジットのカヤックとスキンカヤックは別物です。だから高坂さんも僕も苦労しているでしょう。

 それにしても僕は、ジョン・D・ヒース氏のエネルギーには感嘆します。老齢にも関わらず精力的に研究する姿は、自分もそうありたいと願うばかりです。

                洲澤 育範

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