{ジョン・D・ヒース氏の事など}

 今世紀初頭まで極北の海を縦横無尽に走り回ったスキンカヤック。一度は地球上から消え去ろうとしたモンゴリアンの海洋文化を21世紀に引き継がせた人物の一人、ジョン・D・ヒース氏。
 ジョンは現在78才の高齢だ。彼は1954年から今まで、トラディショナル・スキンカヤックの研究と継承に尽力してきた。 ジョージ・ダイソンを始め多くのビルダー、研究者に指針を与えた「The Bark Canoes and Skin boats of North America」と言う古典的名著にもしばしばジョンの名前は登場する。
 ジョンはカヤックのライン取り(断面図などの図面)の方法を確立したり、バイダルカの詳細な分析・区別方法、グリーンランド・スタイル・パドリング、リカバリー、ロール技術の紹介、グリーンランド・ナショナル・カヤックリーグや毎年夏行われるグリーンランド・カヤック・レースの紹介など良質な仕事を数多くこなしている。グリーンランド・カヤック・チャンピオンのピーターセンやマリジヤックの素晴らしいロールの映像や、パドリング技術の映像をご覧になられた方も多いと思う。これはみなジョンの仕事なのだ。
 現存する研究者で、イヌイットより直接その技術を授かり、多くの時間をイヌイットと共に過ごし、魂の共有をした人物はジョン以外に多くはいない。現代文明の香りのしないイヌイットより多くを学んだのだ。
 ジョンは高齢にもかかわらず、4・5年前まで極北の地でフィールド・ワークを行っていた。今は白内障を患い調子がよくないようである。「僕はもう年なので、カヤックを作る事も乗る事もできないよ。」
 ジョンのことを研究者とは呼びたくない。彼はリアル・トラディショナル・スキンカヤッカーなのだ。

 最後に、僕のつたない英語に気長につきあい、多くの指針を与えてくれるジョンに感謝します。

                     洲澤 育範

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